エヌセイド(NSAID) / 非ステロイド性抗炎症薬

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●参考文献:登録なし   ●関連文書:登録なし

 

下記はクスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方(PHP研究所)から。一部改変。

 

 エヌセイド(NSAID)は、高くなった体温を下げ(解熱)、痛みを抑え(鎮痛)、炎症を抑え(抗炎症作用)、血小板による出血を止める働きを抑える働き(抗血小板作用)があるなど、多くの特徴を持つ成分のグループ名です。市販薬の飲み薬で該当するのは、アスピリン(=アセチルサリチル酸)イブプロフェンロキソプロフェンエテンザミドサリチルアミドアルミノプロフェンです。

 エヌセイドはその効果が高いため、市販のかぜ薬解熱鎮痛薬の多くの製品に含まれており、とても身近な市販薬の成分といえますが、注意を要する副作用もあるため、市販薬を選ぶ際、エヌセイドが入っているのか否かは、とても大事なチェックポイントといえます。

 エヌセイドの副作用には、胃を荒らす胃粘膜障害や出血(抗血小板作用)、腎障害、肝障害、薬疹、喘息などがあるため、市販薬成分の中では最も注意を要する成分といえますので、かぜ薬や解熱鎮痛薬の市販薬を利用する場合は、医薬品登録販売者または薬剤師に相談するなどして、含まれている成分の確認をすることをおすすめします。

 抗血小板作用について補足説明します。血液の中には血球成分が3つあります。赤血球と白血球、血小板です。血小板は、ケガをして血管が損傷を受けて出血したときなどに、止血のために働きます。血管の損傷部位に血小板が集まり、粘着するなどして止血を促すのです。そして、その止血の役割を邪魔する方向に働く作用を抗血小板作用と呼びます。血小板に抗(あらが)う作用、ということです。

 この抗血小板作用のある成分としては、エヌセイドの中でも特にアスピリンが有名で、その作用は7 ~ 10日ほど続くことが知られています。そのため、手術や胃カメラ検査、大腸カメラ検査など、出血する危険性のある医療行為の前には、医師や看護師から解熱鎮痛の目的にはアスピリンを使わないようにと、言われた方もいるのではないかと思います。

 アスピリン以外のエヌセイドにも、抗血小板作用はありますが、アスピリンに比べると、かなり短い時間しか抗血小板作用は働かないため、アスピリンが最も注意を促されることが多いです。

 2014年にデング熱(デング出血熱)が話題になりました。デング熱では、発熱と頭痛や筋肉痛など、「かぜかな?」と思う症状が出るため、発症当初はかぜ薬や解熱鎮痛薬を使いたくなりがちです。デング熱が話題になった際、アスピリンイブプロフェンロキソプロフェンを避けるよう、新聞やテレビなどのマスメディアで報道されました。これらの3つの成分は、いずれもエヌセイドに該当します。

 デング熱は、悪化すると出血しやすくなる感染症です。そのため、エヌセイドの抗血小板作用により、出血がさらに止まりにくくなりますので、少しでもその危険性を避けたいということなのです。副作用には胃潰瘍などの胃粘膜障害があり、時に出血源となることもあります。これらを避けるために、アスピリンイブプロフェンロキソプロフェンを避けましょうと、新聞やテレビなどのマスメディアで注意喚起されたわけです。

 

【呼称について】

 「NSAID」はNon-Steroidal Anti-Inflammatory Drugの略です。「NSAIDs」と複数形で表記されることも多いです。エヌセイドというカタカナ表記は、厚生労働省の「非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作」の患者向け文書を参考にしましたが、その他、「エヌセイズ」や「エヌセッズ」と記されることもあるようです。

 Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugの和訳では「非ステロイド性抗炎症薬」と記されることが多いですが、「非ステロイド性消炎鎮痛薬」「非ステロイド性鎮痛薬」と記されることもあります。

 実際に医薬品として利用されている成分の数もたいへん多く、医療用医薬品を含めると2桁の種類の成分が日本では使われています。

 本サイトでは、市販薬について、一般の方とのやり取りを想定し、エヌセイド(NSAID)とカタカナメインの用語で、タイトルをつけておりますが、このように呼称が多彩で、読み物ごとで使う用語も異なると思われます。一般の方々への説明の際には、それを前提とした配慮が必要ではないかと思います。

 例えば、メディアからのアナウンスで「イブプロフェンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬の服用を避けましょう」とあれば、医療従事者はイブプロフェンだけでなく、アスピリン(アセチルサリチル酸)ロキソプロフェンなど他のエヌセイド(NSAID)も使ってはいけないと解釈するのが一般的ですが、一般の方は「アセチルサリチル酸イブプロフェンとは違うので大丈夫」と考えるかもしれず、誤った判断につながるリスクが懸念されます。市販薬においても、多くの解熱鎮痛成分がありますので、一般向けにアナウンスする際は、すべての該当する成分名を示すなど、工夫を要する状況にあるのではないでしょうか。

 日本の市販薬(内服)で使われているエヌセイド(NSAID)のうち、本サイト掲載中の製品で使われている成分を示します(*全製品からの検索結果ではない)。

  ・サリチル酸系 :アスピリン(アセチルサリチル酸)エテンザミドサリチルアミド
  ・プロピオン酸系:アルミノプロフェンイブプロフェンロキソプロフェン

 なお、解熱鎮痛薬として広く使われている「アセトアミノフェン」は、抗炎症作用がほとんどなく、「エヌセイド(NSAID)」には含めないとする定義がメジャーなのですが、「アセトアミノフェン」を含めて「エヌセイド(NSAID)」と説明している書籍やWEBサイトもあるため、「エヌセイド(NSAID)」をどのように定義しているか、読み物ごとに確認する必要があります。