脱水症

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下記はクスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方(PHP研究所)から。一部改変。

 

 脱水症とは、体の水分が不足した状態のことで、軽いものであればだれでも日常的に経験します。水とともにナトリウム(塩に含まれる)やカリウムなどの電解質も大きく不足している場合もあり、水だけでなく電解質のことも気にかける必要があります。

 脱水症の症状で、一般的なものは、のどの渇きやだるさです。脱水の程度が強くなってくると、ふらつきや立ちくらみ、頭痛、吐き気、嘔吐、汗が出なくなる、体温上昇(体温計で測ると38度以上の高熱、ということもあります)などがみられるようになります。さらに、重度になると筋痙攣、意識障害、腎機能障害、血圧低下となり、最悪の場合、死に至ることもあります。

 脱水症そのものも危険なのですが、体中を流れる血液の水分も減り、血液は濃縮状態になってしまいます。血管が詰まることで生じる脳梗塞や心筋梗塞など、命に関わる病気の原因のひとつになってしまう場合もあります。

 脱水症を防ぐには、どのような状況で脱水症に至るのかを、知っておく必要があります。

 汗をたくさんかくと、のどが渇きます。このパターンは「汗」という、みえて、感じるものがありますので、汗の量に応じた水・電解質をとればよいことになります。

 お風呂のときは、どうでしょうか。お風呂は熱ければ熱いほど、長ければ長いほど、汗の量も増えることになりますが、お風呂のお湯と汗が混じりますので、「汗」がみえるという感覚は少ないでしょう。けれども、これまでのご経験の中で、しっかり水分補給が必要ということは、知っていますね。お風呂では、かなりたくさん汗をかきますから、お風呂の前後の水分補給はとても大切なのです。

 次は飲酒です。お酒などのアルコール飲料を飲むと、その後、たくさん尿が出ますね。同じコップ1杯の量であっても、お水を飲んだときより、お酒を飲んだときのほうが、一般的に、尿の量は多くなります。アルコールには利尿作用(尿の量を増やす作用のこと)があるため、多くの水分が体から出ていくのです。お酒を飲みすぎた翌日の朝、のどがカラカラに渇いた経験のある方もいることでしょう。

 カフェインもアルコールと同様、利尿作用があります。カフェイン入りの飲料、例えばコーヒーやお茶、エナジードリンクでも、尿が余計に出ていってしまうことを知っておくとよいでしょう。

 ここまでは体調のよいとき、つまり日常の話です。次は発熱や下痢、嘔吐があるときについてです。

 例えば、体のどこかがおかしくなって発熱し、38度以上の体温になったとします。発熱すると、体温の上昇に伴い、体の表面から蒸発して逃げていく水分の量が増えます。さらに、発熱すると食欲がなくなることが多く、普段より、少ない量の食べ物しか食べられなくなる場合もあります。ごはんにも水分が含まれ、みそ汁はほとんどが水分です。普段は食べ物から多くの水をとっているのですが、それが減ってしまいます。普段と同じくらい水を飲んでいても、食べ物の量が減ったら、普段よりも水分摂取量が少ないということになります。そのため、発熱すると脱水しやすくなるのです。

 下痢は、その中身のほとんどが水ですが、電解質も多く含まれています。1日に数回の下痢もあれば、トイレにずっと座ったままになる、ひどい下痢もあります。ひどいときは大量の水と電解質が、一気に出ていきます。そのため、水と電解質を補うことが大事になります。飲食すると下痢がひどくなると考えて、あえて飲食をひかえる方がいますが、脱水の程度がひどくなる一方になりますので、上手に水・電解質を補給するようにしたいところです。

 最後に嘔吐の話です。嘔吐は、脱水にとっては、特別な意味があります。不足した水・電解質は、飲食で脱水症を防ぐことができますが、吐き気や嘔吐があると、その飲食が十分にはできなくなります。口から水・電解質をまともにとれない場合は、水・電解質などを、少しずつ、何度も飲んで、脱水を予防します。それでもなお嘔吐を繰り返す場合は、早めに医療機関で点滴などをする必要も出てきます。嘔吐に加え、下痢や発熱が伴いますと、急速に水・電解質が体から逃げていくと同時に、口から補うことができないので、より短時間で脱水症におちいってしまうのです。

 なお、心臓や肝臓、腎臓の病気など全身にむくみが出やすい病気のある方は、水・電解質を補う量を、個々の状況によって慎重に加減する必要もあります。それらの病気がある場合は、早めに医療機関を受診することが必要です。

【経口補水液】

 最後に、脱水対策に、自宅で簡単に作れる経口補水液の紹介をします(上図参照)。経口補水液とは、水・電解質を補給するための飲み物です。スポーツドリンクとは別の飲み物で、各社から販売されています。ドラッグストアなどで購入できますが、シンプルなものは自宅でも簡単に作れます。

 なお、ここで紹介するのは、水と電解質のナトリウムを補うものです。汗や嘔吐では水とナトリウムが多く失われますが、下痢があるとそれに加え、カリウムも多く失われます。カリウムは、フルーツや野菜に多く含まれる電解質ですので、フルーツジュースや野菜ジュースなどを数百ミリリットルほど混ぜるなどして、カリウムの補給に役立ててください。