自律神経(交感神経・副交感神経)

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下記はクスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方(PHP研究所)から。一部改変。

 

 自律神経というのは自分の意思ではコントロールできない神経のことです。なぜ、市販薬の成分の話に自律神経の話が出てくるのでしょうか。

 市販薬(医療用医薬品でも同様ですが)には、自律神経に影響を与える成分が多く使われているため、関連する副作用に注意しないといけないからです。その副作用にはパターンがあります。成分ごとに、ひとつひとつ理解するよりも、パターンを覚えておくと、役に立ちます。

 自律神経は体中に張り巡らされています。その働きは、心臓や血管、気管、気管支、胃腸、膀胱、子宮、皮膚、鼻、目など全身に関連し、脈拍数や血圧、鼻水や唾液の出る量、眼圧、尿量、排尿、排便などに影響を与えることになります。市販薬を、用法・用量を守らずに、飲みすぎてしまうと、自律神経への働きが過剰になり、さまざまな副作用が生じてしまうことになります。

 その自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。交感神経が刺激されると心身が興奮した状態(何かに立ち向かうような活動的な状態で、感性を高め、筋力を高める、いわば攻撃モード)になります。一方、副交感神経が刺激されると心身が休息状態(ゆったりとした状態で、その間、食べ物からの栄養を取り込み、不要な排泄物を体の外に出すなど、いわば守備モード)になります。おおむね逆方向に働く2つの神経が、普段はうまくバランスを保ちながら、体調を整えているというわけです。

 市販薬には、「交感神経を刺激する成分」と、「副交感神経を抑制する成分」が、よく使われています。

 「交感神経を刺激する成分」は、攻撃モードを刺激するわけですが、鼻づまりを軽くすることや、気管支を広げるために使われます。用法・用量を守れば、それほど心配はいりませんが、過量に飲んだりしたら、鼻以外の部分に悪い影響を与え、副作用が出てしまいます。例えば、動悸(胸がドキドキする症状で、脈が速いときなどに生じます)や血圧が高くなることもあれば、手指のふるえや頭痛、発汗、のどの渇き、興奮やイライラ感、不安感などがみられる場合もあります。

 「副交感神経を抑制する成分」は、守備モードを抑制するわけですが、鼻水を減らすことや、腹痛のクスリとして使われます。副作用としては、目のかすみ、口のかわき、胃もたれや便秘などの症状が出ることがあります。また、薬局などで、「緑内障と言われたことはないですか?」とか、男性の方では「前立腺の病気はないですか?」などと質問されたこともあるのではないかと思います。一部のタイプの緑内障の患者では症状の悪化や、前立腺肥大の患者では尿閉(尿が出なくなる症状)が出てしまうこともあります。

 「交感神経を刺激する成分」と「副交感神経を抑制する成分」のどちらも、普段よりも脈が速くなる方向に作用します。これは心臓への負担が増えることを意味しますので、ご高齢の方や、心臓への負担を避けたい病気を持っている方にとっては、注意を要する成分です。